音樂活動 21 筆
3月は、tkの音楽世界の懐の深さが際立つ月です。 14本のレビューが集中したのは、クラシック、ロック、メタル、ヴィジュアル系、ボーカロイド関連と、ジャンルの垣根を全く引かない自由さです。その中でも特に印象的なのは、ホルストの吹奏楽作品への没入です。木星で知られた作曲家の別の側面を掘り下げ、「クラシック音楽としての吹奏楽」という視点から、イギリス音楽の優雅さとKing Crimsonへの言及まで繰り出す姿勢は、単なる鑑賞では終わらない思考の深さを示しています。 もう一つ目を引くのは、大槻ケンヂと絶望少女達の『かくれんぼか鬼ごっこよ』への5つ星です。キャラソン的見た目をまとった実質的なアート作品として、「久米田康治と大槻ケンヂの世界観のシンクロ」を読み解く視角は、異なる表現者の共振をしっかり捉えています。メタル、プログレ、ロック、吹奏楽、クラシック、実験的なバンドプロジェクトまで、ジャンルを超えた傍聴の先に一貫した「構築」「思想の表出」への関心が見えています。 3月のtkは、多彩な作品を通じて音楽の本質的な価値を問い直し続けているようです。
ヴィジュアル系由来の歌メロのメロディアスさは保ちつつ、グルーヴメタル的なリフとビートで押していく新境地。セパルトゥラなども想起させるような呪文のようなリズムがくせになる。
ファイナルファンタジー10をはじめサウンドトラックでの活躍が印象的な浜渦楽曲の実演コンサートの録音。音楽じたいもクラシカルでありつつモダンでおしゃれで素晴らしいが、何より熱量の高い演奏が凄い。
これだけテンションの高いスラッシュを今も聴かせてくれるのはありがたい。このザクザク感は彼らでしか味わえない。ギターの切れ味もさることながら、ドラムの粒立ちの貢献が相当に大きそうだというのが今作でもよくわかる。ヴォーカル交代をものともしない快作。
カインズホームを歌った曲でそこそこなバズりを見せたヴィジュアル系リバイバルバンド。もともとエイプリルフール企画で生まれたバンドなのだが活動を続けどんどん本格化、これが2枚目のフルアルバムになる。当初はコミックバンド的な受け取り方をしていたのだが、このアルバムが出た時に、コンセプトがオモロすぎるだけでマジのヴィジュアル系バンドなのだなと認識を改めた。それっぽさを突き詰めつつもヴィジュアル系だけでないルーツも強く感じさせ、目が離せない。これからもガキやジジイのことを歌ってほしい。
木星(ジュピター)があまりにも有名なホルストだが、実は吹奏楽の世界ではバッハやベートーヴェンなみのマスターピース作曲家。 軍楽隊的なものをルーツに持つ吹奏楽が芸術作品としての地位を築き始めた初期に、この「ミリタリーバンドのための組曲」2曲が書かれ、アメリカの指揮者フェネルにより発掘されて広まった。 そういう意味では、クラシック音楽としての吹奏楽を聴いてみるにあたっての基本のキともいえるアルバムであり、英国出身のボストックによる音楽づくりもいかにもブリティッシュでよい。 木星のような作風を想像すると驚く箇所もあるかもしれないが、同時に多数のメロディが蠢くオーケストレーションなどはいかにも英国的でKing Crimsonの国だなあと感じるし、冒頭のマーチングソングなども、行進曲ってこんなにエモくていいの?という新鮮さがあるはず。ぜひとも。
吹奏楽作曲家の大御所、鈴木英史の作品集が急に配信リリース。 CDでVol.3まで出ていたシリーズを配信用にまとめたものっぽい。私はどれも持ってたのですべて既知の音源のはず。 鈴木氏の「〇〇セレクション」シリーズは楽器初心者でも楽しくクラシックのおいしいところを味わえる入門的な内容で、教育現場をメインに爆発的ヒットをしたシリーズ。 シリアスな曲もあって、「カントゥス・ソナーレ」、「ライフ・ヴァリエーションズ」、「鳳凰」あたりは音楽ファンにも自信をもっておすすめできる内容。
名取さなは個人勢VTuberでありながら多数のオリジナル曲を製作し、バンド編成によるワンマンライブも2回成功させている実力派。特に最近の楽曲はこうありたい、世界にこうあってほしいという思想が表出したような曲が多いのだが、今回は世間を覆う「冷笑」へのカウンターとしての「熱笑」。そもそも冷笑自体がカウンター的に生まれた考え方とは思うが、さらにそのカウンターになることで翻って逆張りから順張りに戻るという発想が面白く、同時に今の世情を反映しているとも言えそう。ジャケのインパクトも強い。
ベルリン・フィルでの指揮も記憶に新しい山田和樹がドイツ・グラモフォンからアルバムをリリース。大手から日本人指揮者が、しかも超有名曲というわけでもないウォルトンでというのは喜ばしい。山田らしい堅実な指揮っぷりで、イギリス音楽の優雅さにもよくマッチしている。ウォルトンの音楽も様々な要素を持ちつつ最後はしっかり盛り上がって聴きやすく、エルガーやヴォーン・ウィリアムズと一緒にもっと聴かれてよい作曲者と感じた。
2010年のサマーソニック、マイク・ポートノイが脱退する直前のライブの記録がポートノイが復帰して来日公演が終わったタイミングでリリース。しばらくマイク・マンジーニの端正なドラムに慣れてきた身としてはあまりにも豪快で感情的な演奏(これはバンド全体としてそうだが)に驚かされる。バンド内での緊張感がよく表れたライブ盤で、脱退〜復帰の流れを経た今だからこそ懐かしみながら楽しめる作品かと思う。
さよなら絶望先生のキャラソンアルバム…に見えるのだが、実態は大槻ケンヂとNARASAKIによるやりたい放題のプロジェクト的アルバム。まず特定のキャラにフォーカスした曲などはない。「さよなら!絶望先生」においてすら、糸色望を明確に指すわけでもない。それでいて絶望先生のアルバムとして納得できるのはひとえに久米田康治と大槻ケンヂの世界観のシンクロによるものだろう。音楽的にも素晴らしく、NARASAKIによる「かわいい声+轟音ロック」の方程式はここで完成を見たと言ってよい。スラッシーに刻むギター、ドゥームなビート、音程感の薄いほど歪んだサウンド。大槻ケンヂの作品群のなかでもトップクラスにヘヴィである。
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