@assxx-y01
本作のツアーを見たが、彼の最大のチャームは声でもソングライティングでもなくぶっきらぼうさである。感情の発露や気分によってインディーフォーク/SSWの枠を逸脱する時(具体的にはオートチューンによるヴォーカルの変化、原曲にはない楽器の抜き差し静と動の行き来等々)必ずハイライトになる。Fiona AppleやModest Mouseとも近いかも知れない。 この音源の中にはその瞬間はほぼ録音されていない。ルーツ回帰の様相は綺麗に整理された微細な音像からして意図的であり、それは恐らくRCAからの初めてのリリースという状況も関わっているはず。彼の最高傑作が出るのはこの先に違いない。Elliott Smithか、Neil Youngか、Teenage FanclubやBig Starか、それとも…
タイトル曲でもある1曲目。2010年代の象徴の一つの3連のリズムのピアノに沿って歌われる「Goddamn, man-child」という歌詞、そしてドラムレスのまま緩やかにサイケデリアを纏いながら、決して酩酊することなく声だけがくぐもり遠ざかっていく。60年代後半から70年代前半の激動期とシンクロするこの曲が予見していたのはパンデミックの陰りだけではなく、例えば映画『インヒアレント・ヴァイス』が描いた革命を標榜していた空気が消え去った後の弱肉強食の権力構造ともシンクロする。10年先まで予見してしまっていた傑作。